日本テレビ「NEWS ZERO」

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イチメン 2010年10月18日 遺伝資源

今、1年間に万種もの生物が絶滅していると言われています。

これは、絶滅が危惧されているコウノトリです。
20世紀の初めにはおよそ100羽が確認されていましたが、
現在は1羽から数羽が確認されているだけです。
田んぼが、住宅地などになり住む場所が減ったことが原因とみられています。

 

こうした生物の絶滅を食い止める国際会議が今、名古屋市で行われています。
それがCOP10です。


実は、地球の環境を守るための国際的な約束は大きくわけて2つあります。

1つは温室効果ガスの排出を規制し地球温暖化防止を目指す条約です。
この条約には192の国と地域が参加し、
デンマークでCOP15と呼ばれる国際会議が去年、行われたばかりです。

もう1つが生物の絶滅を食い止めるための条約です。
この条約には193の国と地域が参加しています。
現在、行われているのはこの条約に基づくCOP10です。

この2つの条約は私たちが生きていく環境を守る上でどちらも欠くことができない
重要なものとなっています。


生物を守ることに世界各国が力をいれるのは、
私たち自身の命を守るために重要なだけでなく、生活にも数々の恩恵をもたらしているからです。

 

例えばこちら、ニチニチソウというマダガスカル原産の花です。
夏ごろになると生花店などでも売っています。

そしてこれは、八角という中国原産の木の実です。
中華料理の香辛料として使われるものです。

実は、これらをもとにして私たちの生活に欠かせないあるものがつくられるのですが、
一体何かご存じでしょうか?
答えは薬です。

 

ニチニチソウからは抗ガン剤が、そして八角からはインフルエンザ治療薬がつくられます。
このように薬などのもとになる生物を遺伝資源、または生物資源と呼びます。
実はCOP10では、この「遺伝資源」をめぐりある議論が出てきています。
議論の結果次第では薬の値段があがってしまうかもしれません。


問題となっているのは、遺伝資源が生み出す利益をどのように配分するかです。
一例を見てみましょう。

遺伝資源の多くは、途上国で発見され、

先進国の製薬会社へ提供されています。

作られた薬の売り上げの一部は途上国に支払われますが、
その配分は製薬会社と途上国が話し合い決めることになっています。

ところが現在製薬会社は、遺伝資源から遺伝情報だけを取り出し、
それをもとに薬を作り出すことができるようになりました。
つまり遺伝資源そのものをもらわなくても、薬をつくれるようになったのです。
このようにして作られた薬の売り上げは、途上国には支払われていません。

これに対し途上国は、もともと自分たちが提供した資源の情報をもとに
つくられているのだから、この売り上げも支払われるべきと主張しているのです。


しかし先進国にとっては途上国にお金を支払うとその分を補うため、
薬の値段をあげなくてはならなくなる可能性があります。
そのため途上国と意見が対立しているのです。

COP10では、名古屋議定書という形でこの利益の配分について、
国際的なルールをつくることを目指しています。

COP10は来週金曜日29日まで行われます。