日本テレビ「NEWS ZERO」

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イチメン 2010年1月4日 IAEA"トップ"×櫻井キャスター

日本テレビGスタジオ。
就任後、一時、日本に
帰国していた天野事務局長に
お会いしました。
(以下、櫻井キャスター:櫻、天野事務局長:天)

天: IAEA天野です。
櫻:よろしくお願いします。
天:よろしくお願いします。
櫻:まずは、日本人初、
  アジア人としても初の
  IAEA事務局長、就任。
  いま実感は?
天:非常にリラックスしていて、毎日、事務所に行くのが
  楽しいです。
櫻:楽しい?
天:毎日、新しいことを
  勉強できる。
  それから、今まで
  お目にかかれなかった方にも
  お目にかかれるわけですね。
  今日が良い例だと思います。
櫻:(笑)ありがとうございます。

国際原子力機関IAEAの本部は、  
オーストリアのウィーンにあります。

150を越える国が加盟し、
核の番人として目を光らせる、重要な国際機関のトップに、
去年12月、就任したのです。

天野事務局長の受諾演説
「一致団結して、我々が
 直面する地球規模の問題に取り組んでいきましょう」

櫻:IAEAというのをどうゆうものなのか?
  まずお聞きしていいですか?天:核兵器の拡散を
  防止するという目的と
  原子力の技術をもちいて
  世界の繁栄のために尽くす。 ふたつの目的があります。
  核の番人と言われることもありますが、
  もう一つは、僕は、核の助っ人だと
  思うんですけどね。 
櫻:核の助っ人?
天:原子力の技術を使って
  世界の日本の生活が
  良くなるように
  お手伝いしていく役割がある。

IAEAがになう、『番人』と『助っ人』2つの役割。

まず、核の番人とは、
IAEAが世界中で行っている
 『査察活動』の役割を指します。
核兵器を作っていないか、チェックし、『核不拡散』
つまり、核兵器を持つ国が
これ以上増えないようにしています。
一方、核の助っ人とは、
平和利用の技術を加盟国に
提供する役割を指します。

櫻:核の助っ人たる平和利用に
  ついては知らないことが
  多いんですけど
  具体的にどのようなこと?
天:いっぱいありますね。
  例えばガン治療がありますね。
  放射線を使って
  ガン治療ができますね。
  それから原子力発電
  これはエネルギー対策、
  地球温暖化の切り札の
  ひとつだと思います。
  それから、食料ですとね、
  稲の品種改良のために
  放射線は有効なんですね。
  食料増産のためにも
  役に立つと思いますよ。

櫻:どうしても核と聞くと
  無くすもの廃絶するものと考えがちですけど、
  平和利用という大きな
  可能性を含んでいるんですね天:そうですね
  特にIAEAの加盟国は
  152ありますけど
  そのうち100か国以上は
  開発途上国なんです。
  その開発途上国の
  ほとんどすべての国が
  食糧増産ですとか
  エネルギー問題ですとか
  そういう問題に強い
  関心をもってるんですね。

就任後、最初に選んだ公式訪問先は、アフリカのナイジェリア。
ガン治療に取り組み始めた途上国を支援するためでした。

天:ガンっていうと今までは先進国の病気で、
  開発途上国の人は
  ガンはあまり多くいないと思われてましたが、
  これは間違いだと思います。
  確かに今まで、途上国では
  ガンの患者さんは
  少なかったんですが、
  なぜ少ないか?
  検診に行かないからですね。
櫻:そもそも発見できないと?
天:そうなんです。
  こないだ行った
  ナイジェリアでは、
  ガンで亡くなる方が、
  マラリアとエイズで
  亡くなった方を合わせた
  よりも多いそうです。
櫻:そうなんですか...

核の助っ人としても
世界に貢献したいと語る天野事務局長。
そして、唯一の被爆国、
日本出身の事務局長として、
「特別な思い」を持っていました。

櫻:2009年の8月9日に
  長崎に私いってきました。
  その時に、長崎の
  高校生がいっていた言葉
  オバマのプラハ演説が
  うれしかったといってた
  すごく心に響いた。
  IAEA事務局長として、
  天野さんは広島長崎に
  いかれる思いといのは
  おありなんですか?
天:日本人として事務局長に
  なったわけですから
  まず最初の年に広島、長崎の式典に参加すべきじゃ
  ないかなと思う。
  もちろんお招きいただければ
  の話ですけど。
櫻:もし参加した場合はその場で、何を伝えていかれようと?
天:IAEAのですね
  核兵器の拡散を
  防止するっていうのは
  言ってみれば、水平の話、
  核兵器が横に
  広がらないように。
  核軍縮っていうのは垂直の話
  核兵器がふえていく
  減っていくのは核軍縮
  横軸と縦軸の差はありますが、両方とも核兵器に反対する
  ことでは同じなんですね。
  そういう意味で広島、長崎を訪問させて頂いて
  核不拡散に対する気持ちを
  新たにできればと思います。

核不拡散に取り組んでいるIAEA。
その事務局長が式典に出席するのは、
史上初めてのことになるそうです。
核のない世界への思い...

しかし、今なお世界は、
核を巡って、対立を深め続けています。

櫻:まずは、2010年、最初に注目されるであろう問題
  イランの問題について
  伺っていきたいんですけど、
天:イランの問題は非常に複雑で、イランは、
  「イランの活動は平和目的だ」 と言ってるワケですね。
  ただ、本当にそうなのか?
  ハッキリした結論が出て
  いないのが現状なんですね。
櫻:平和利用だと
  主張し続けているイラン。
  緊迫する状況にある中で
  天野さんはどのように
  交渉していきますか?
天:イランというのは
  地域の大国ですし、
  長い文化の伝統が
  あるわけですね。
  そういうイランに対して、
  一つは、尊敬を持って接する必要があると思うんですよ。

実は、イランは、核兵器を作らないことを
約束した条約に加盟しています。 

しかし、去年9月、軍が厳しく管理するエリアで、
新たなウラン濃縮施設の建設が発覚。     
今、その疑惑が深まっています。

そもそも、イランは、
大量の低濃縮ウランを持っています。

これを濃縮すると
平和利用の燃料になるのですが、さらに濃度を高め続けていくと、
核兵器の材料にもなるのです。

だからこそ、国際社会は、 「濃縮活動をやめろ」と求めているのですが、
イランは、あくまで「平和利用」を主張。
こうした中、
新たな濃縮施設の建設が発覚したため、事態は緊迫しているのです。

櫻:いま対話をイランが
  しようとしていない中、これ戦争になって
  しまわないのだろうかと
  すごい怖さを孕んでると思う。天:時間が無限にあるわけでは
  ありませんが、
  対話のチャンスはあると思います。
  IAEAの仕事というのは
  ある意味で怖い仕事なんですね。
  世界の安全保障に
  関わるような仕事を
  するわけですから、いつも
  リスクはあるんですけど、
  そのリスクを回避するようにするのが
  私の勤めだと思います。
櫻:イランに行くことは、
  考えているんですか?
天:今のところ具体的な
  計画は無いですけど、
  イランからは、
  「そのうちに来てください」  というお話はあります。
櫻:あっ、そうなんですか?
天:はい。
櫻:正式に話があった時には、
  天野さんとしては
  行く準備はある?
天:そうですね。
  やっぱり行くからには、
  ある程度の成果というか
  意味のあるモノじゃなければ
  いけないと思うんですね。
  そこで、今後どうなるか
  よく見極めた上で、
  適切な機会に行きたいと
  思っています。

そして、北朝鮮の核問題では、
日本人だからこそできることがありました。

櫻:北朝鮮問題に関しては、
  天野さん、どのように
  考えていますか?
天:今は機能してないけど
  六者協議という
  対話の枠組みがあります。   
  対話の枠組みを再開することによって
  何とかいい進展がみられる
  ようになってほしい。

北朝鮮の
核問題を話し合う場として、
日本やアメリカなどと
北朝鮮が対話する
 『6か国協議』があります。
しかし、現在は、北朝鮮が、
対話を拒否しているため、
中断したままになっています。

しかも、199年に北朝鮮はIAEAを
脱退しています。

櫻:IAEAとして
  出来る手だては
  今は無いということ?
天:今はですね、
  査察官もいませんし、
  IAEAの役割というのが
  ありませんから
  今は出来ることがないんです。
櫻:日本人として
  前任のエルバラダイ氏よりも  何かできることは?
天:ヨーロッパから見ると
  イラン問題は圧倒的に
  重要な訳ですよ。
  僕は、こう言うんです。
  西から見ればイランが
  一番、大事ですよね。  
  でも東から見ると
  北朝鮮の問題は、
  それに負けず劣らず
  大事なんですよ。と。
櫻:私たちがイランの問題が
  遠い事に感じてしまうのと
  同じようにヨーロッパでは
  北朝鮮の問題が少し蚊帳の
  外のトーンがある?
天:ありますね。
  私から見ると両方大事ですね。  
  両方が大事だと言うことに
  私の存在意義が
  あると思いますね。

国際機関のトップとしての決意を語った天野事務局長。
任期は、年です。

櫻:IAEAのトップになられて
  外側からみて今日本は
  どのようにうつって
  らっしゃるんですか?
天:ちょっと元気ないなって気は
  しますけれども、
  でも潜在力はものすごく
  あると思うんですね。  
  (世界の)国際関係の人は優秀な人がいっぱいいるけど、  
  みんなで一緒になって何かやるっていうのが
  得意じゃないんですね。
  日本人はしゃべるのが
  少し下手なんですけれども実行するのはうまいですね
  行動力があると思う。  
  日本の文化というか伝統を
  IAEAの場にもっていけたらなと思います。