日本テレビGスタジオ。
就任後、一時、日本に
帰国していた天野事務局長に
お会いしました。
(以下、櫻井キャスター:櫻、天野事務局長:天)
天: IAEA天野です。
櫻:よろしくお願いします。
天:よろしくお願いします。
櫻:まずは、日本人初、
アジア人としても初の
IAEA事務局長、就任。
いま実感は?
天:非常にリラックスしていて、毎日、事務所に行くのが
楽しいです。
櫻:楽しい?
天:毎日、新しいことを
勉強できる。
それから、今まで
お目にかかれなかった方にも
お目にかかれるわけですね。
今日が良い例だと思います。
櫻:(笑)ありがとうございます。
国際原子力機関IAEAの本部は、
オーストリアのウィーンにあります。
150を越える国が加盟し、
核の番人として目を光らせる、重要な国際機関のトップに、
去年12月、就任したのです。
天野事務局長の受諾演説
「一致団結して、我々が
直面する地球規模の問題に取り組んでいきましょう」
櫻:IAEAというのをどうゆうものなのか?
まずお聞きしていいですか?天:核兵器の拡散を
防止するという目的と
原子力の技術をもちいて
世界の繁栄のために尽くす。 ふたつの目的があります。
核の番人と言われることもありますが、
もう一つは、僕は、核の助っ人だと
思うんですけどね。
櫻:核の助っ人?
天:原子力の技術を使って
世界の日本の生活が
良くなるように
お手伝いしていく役割がある。
IAEAがになう、『番人』と『助っ人』2つの役割。
まず、核の番人とは、
IAEAが世界中で行っている
『査察活動』の役割を指します。
核兵器を作っていないか、チェックし、『核不拡散』
つまり、核兵器を持つ国が
これ以上増えないようにしています。
一方、核の助っ人とは、
平和利用の技術を加盟国に
提供する役割を指します。
櫻:核の助っ人たる平和利用に
ついては知らないことが
多いんですけど
具体的にどのようなこと?
天:いっぱいありますね。
例えばガン治療がありますね。
放射線を使って
ガン治療ができますね。
それから原子力発電
これはエネルギー対策、
地球温暖化の切り札の
ひとつだと思います。
それから、食料ですとね、
稲の品種改良のために
放射線は有効なんですね。
食料増産のためにも
役に立つと思いますよ。
櫻:どうしても核と聞くと
無くすもの廃絶するものと考えがちですけど、
平和利用という大きな
可能性を含んでいるんですね天:そうですね
特にIAEAの加盟国は
152ありますけど
そのうち100か国以上は
開発途上国なんです。
その開発途上国の
ほとんどすべての国が
食糧増産ですとか
エネルギー問題ですとか
そういう問題に強い
関心をもってるんですね。
就任後、最初に選んだ公式訪問先は、アフリカのナイジェリア。
ガン治療に取り組み始めた途上国を支援するためでした。
天:ガンっていうと今までは先進国の病気で、
開発途上国の人は
ガンはあまり多くいないと思われてましたが、
これは間違いだと思います。
確かに今まで、途上国では
ガンの患者さんは
少なかったんですが、
なぜ少ないか?
検診に行かないからですね。
櫻:そもそも発見できないと?
天:そうなんです。
こないだ行った
ナイジェリアでは、
ガンで亡くなる方が、
マラリアとエイズで
亡くなった方を合わせた
よりも多いそうです。
櫻:そうなんですか...
核の助っ人としても
世界に貢献したいと語る天野事務局長。
そして、唯一の被爆国、
日本出身の事務局長として、
「特別な思い」を持っていました。
櫻:2009年の8月9日に
長崎に私いってきました。
その時に、長崎の
高校生がいっていた言葉
オバマのプラハ演説が
うれしかったといってた
すごく心に響いた。
IAEA事務局長として、
天野さんは広島長崎に
いかれる思いといのは
おありなんですか?
天:日本人として事務局長に
なったわけですから
まず最初の年に広島、長崎の式典に参加すべきじゃ
ないかなと思う。
もちろんお招きいただければ
の話ですけど。
櫻:もし参加した場合はその場で、何を伝えていかれようと?
天:IAEAのですね
核兵器の拡散を
防止するっていうのは
言ってみれば、水平の話、
核兵器が横に
広がらないように。
核軍縮っていうのは垂直の話
核兵器がふえていく
減っていくのは核軍縮
横軸と縦軸の差はありますが、両方とも核兵器に反対する
ことでは同じなんですね。
そういう意味で広島、長崎を訪問させて頂いて
核不拡散に対する気持ちを
新たにできればと思います。
核不拡散に取り組んでいるIAEA。
その事務局長が式典に出席するのは、
史上初めてのことになるそうです。
核のない世界への思い...
しかし、今なお世界は、
核を巡って、対立を深め続けています。
櫻:まずは、2010年、最初に注目されるであろう問題
イランの問題について
伺っていきたいんですけど、
天:イランの問題は非常に複雑で、イランは、
「イランの活動は平和目的だ」 と言ってるワケですね。
ただ、本当にそうなのか?
ハッキリした結論が出て
いないのが現状なんですね。
櫻:平和利用だと
主張し続けているイラン。
緊迫する状況にある中で
天野さんはどのように
交渉していきますか?
天:イランというのは
地域の大国ですし、
長い文化の伝統が
あるわけですね。
そういうイランに対して、
一つは、尊敬を持って接する必要があると思うんですよ。
実は、イランは、核兵器を作らないことを
約束した条約に加盟しています。
しかし、去年9月、軍が厳しく管理するエリアで、
新たなウラン濃縮施設の建設が発覚。
今、その疑惑が深まっています。
そもそも、イランは、
大量の低濃縮ウランを持っています。
これを濃縮すると
平和利用の燃料になるのですが、さらに濃度を高め続けていくと、
核兵器の材料にもなるのです。
だからこそ、国際社会は、 「濃縮活動をやめろ」と求めているのですが、
イランは、あくまで「平和利用」を主張。
こうした中、
新たな濃縮施設の建設が発覚したため、事態は緊迫しているのです。
櫻:いま対話をイランが
しようとしていない中、これ戦争になって
しまわないのだろうかと
すごい怖さを孕んでると思う。天:時間が無限にあるわけでは
ありませんが、
対話のチャンスはあると思います。
IAEAの仕事というのは
ある意味で怖い仕事なんですね。
世界の安全保障に
関わるような仕事を
するわけですから、いつも
リスクはあるんですけど、
そのリスクを回避するようにするのが
私の勤めだと思います。
櫻:イランに行くことは、
考えているんですか?
天:今のところ具体的な
計画は無いですけど、
イランからは、
「そのうちに来てください」 というお話はあります。
櫻:あっ、そうなんですか?
天:はい。
櫻:正式に話があった時には、
天野さんとしては
行く準備はある?
天:そうですね。
やっぱり行くからには、
ある程度の成果というか
意味のあるモノじゃなければ
いけないと思うんですね。
そこで、今後どうなるか
よく見極めた上で、
適切な機会に行きたいと
思っています。
そして、北朝鮮の核問題では、
日本人だからこそできることがありました。
櫻:北朝鮮問題に関しては、
天野さん、どのように
考えていますか?
天:今は機能してないけど
六者協議という
対話の枠組みがあります。
対話の枠組みを再開することによって
何とかいい進展がみられる
ようになってほしい。
北朝鮮の
核問題を話し合う場として、
日本やアメリカなどと
北朝鮮が対話する
『6か国協議』があります。
しかし、現在は、北朝鮮が、
対話を拒否しているため、
中断したままになっています。
しかも、199年に北朝鮮はIAEAを
脱退しています。
櫻:IAEAとして
出来る手だては
今は無いということ?
天:今はですね、
査察官もいませんし、
IAEAの役割というのが
ありませんから
今は出来ることがないんです。
櫻:日本人として
前任のエルバラダイ氏よりも 何かできることは?
天:ヨーロッパから見ると
イラン問題は圧倒的に
重要な訳ですよ。
僕は、こう言うんです。
西から見ればイランが
一番、大事ですよね。
でも東から見ると
北朝鮮の問題は、
それに負けず劣らず
大事なんですよ。と。
櫻:私たちがイランの問題が
遠い事に感じてしまうのと
同じようにヨーロッパでは
北朝鮮の問題が少し蚊帳の
外のトーンがある?
天:ありますね。
私から見ると両方大事ですね。
両方が大事だと言うことに
私の存在意義が
あると思いますね。
国際機関のトップとしての決意を語った天野事務局長。
任期は、年です。
櫻:IAEAのトップになられて
外側からみて今日本は
どのようにうつって
らっしゃるんですか?
天:ちょっと元気ないなって気は
しますけれども、
でも潜在力はものすごく
あると思うんですね。
(世界の)国際関係の人は優秀な人がいっぱいいるけど、
みんなで一緒になって何かやるっていうのが
得意じゃないんですね。
日本人はしゃべるのが
少し下手なんですけれども実行するのはうまいですね
行動力があると思う。
日本の文化というか伝統を
IAEAの場にもっていけたらなと思います。