日本テレビ「NEWS ZERO」

http://www.ntv.co.jp/zero/

12月1日イチメン 刑事裁判に被害者参加スタート

裁判員制度も注目されていますが
もう1つ、12月1日から日本の刑事裁判が
大きく変わるのをご存じでしょうか?

これまで裁判でともすれば「蚊帳の外」に置かれ
当事者として扱われなかった「犯罪被害者」。
その被害者が、法廷の柵を越え裁判に参加できるようになります。
それが「被害者参加制度」です。


山口県光市の母子殺害事件で妻と娘を亡くした本村洋さんは
被害者参加制度の誕生についてこう語りました。


「改めて感無量です。
自分が事件に遭って裁判に疑問を持った時には
こんな制度ができるとは思わなかったので」

「被害者参加制度」は被害者が希望すれば
検察官のとなりに座って裁判に参加できる制度です。
不安があれば弁護士に同席してもらうこともできます。

制度の適用は「殺人」「傷害致死」
「強姦」「危険運転致死」など重大な事件に限られますが、
被害者が亡くなった場合などは、家族が参加することも可能です。

では、被害者は何ができるようになったのでしょうか?

これまでも「証人」として証言台に立ったり
「意見陳述」という形で自分の気持ちを伝えることまではできました。

しかし、これからは被害者のための席が設けられ、
初公判から判決に至るまで裁判に参加することができます。

そして「被告人に対する質問」「証人への尋問」
さらに検察官に続いて被害者が
「独自の求刑」を行うこともできるようになります。

例えば、検察官が「懲役20年を求める」と求刑した後に、
被害者の家族が「この苦しみは耐え難い。死刑を求めます」と
意見を付けることもできるのです。

一方で、専門家の間では「問題点」も指摘されています。

来年始まる「裁判員制度」では私たち法律の素人も
裁判に参加することになります。

そこに、例えば殺人事件の被害者の父親がいて
被告人に「なぜ娘を殺したんだ」と強い調子で迫ったら、
裁判員はどう思うでしょうか?

その印象だけで被告人を「有罪」と決めつけてしまうかもしれません。

被害者を目の前にして、法律の素人である裁判員が
「合理的」で「冷静な判断」を下せるのか、
心配する声もあります。

では、そもそも何をきっかけに
「被害者参加制度」は生まれたのでしょうか?

実は、これまで被害者は
「傍聴」も抽選で一般の人と同じように並んでいたり
「遺影」の持ち込みが禁止されたり
法廷で泣いていたら「退廷」を命じられた、
などという時代がありました。

それが、1995年の「地下鉄サリン事件」
1999年の「光市母子殺害事件」などがきっかけとなり、
被害者やその遺族から「もっと被害者を見て欲しい」という声が上がります。

その活動が実り、2000年には「犯罪被害者保護法」が成立。

優先的に裁判を傍聴し法廷で意見を述べることもできるようになりました。
そして、きょうついに被害者の参加制度がスタート。
ようやく"当事者"としての立場が与えられたのです。


村尾さんからは
「犯罪被害者は事件の当事者。
真相を知りたいという願いは誰にも増して強い。
今回の措置は犯罪被害者の要請に応えるものとして評価したい。」
というコメントがありました。

12月1日に起訴された事件からこの制度が使えるようになりますが、
早ければ年明けにも実際に被害者が参加して
裁判が行われる見通しです。
以上、イチメンでした。