日本テレビ「NEWS ZERO」

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3月3日ACTION×イチメン 医大生と語る「医師不足」

今回はACTIONとイチメン!がコラボレーションしました。

 

今回、ぼくが注目するのは「医師の卵たち」
大学の医学部で学ぶ医大生です。
いま、過酷な勤務などから
病院をやめる医師が増えているといわれています。
厳しい状況の中で医大生たちは
医師という職業にどんな思いを持っているのか。
同世代の彼らに直接会って取材しました。

 


医療の現状を、医大生はどう考えているのか。
先日、一人の医大生を訪ねました。

 

筑波大医学部4年の忽那(くつな)一平さん。
将来は、地域に根ざした医療を行いたいという忽那さん。
この日彼が訪れたのは、千葉県内の民間病院でした。

 

櫻井「今日はどのようなことをするんですか?」
忽那「大学病院じゃない病院で"病院実習"という形で中を見学したりして。
大学とは地域の病院は違うことをやっているので...」

2年後の医師国家試験に備えて、
様々な病院で実習していると言います。
挨拶を済ませて、まずは着替え。

 

白衣を着れば、見た目は医師と同じですが...

 

櫻井「スニーカーだけが唯一学生ということの頼りです」

 

今、医師不足に悩む病院では、将来の医師確保を狙って、
こうした実習を積極的に受け入れるところが増えているそうです。

まずは、先輩医師の診察に同行させていただきました。
患者は83歳の女性で、 2日前に胆石の摘出手術をしたばかりでした。

患者「すごく先生に助けられました。どうなっちゃうかと思った。
石が6つ出てきたんです。先生のおかげ。
もう少し、生きていたいんです」

患者に頼られる先輩医師を目の当たりにして
忽那さんもとても嬉しそうでした。
この瞬間が、医師の最もやりがいを感じる時なのかもしれません。

続いて、別の病室へ。患者は65歳の男性。
膠原病(こうげんびょう)という難病で、寝たきりでした。
気管を切開したため声を出せず、会話は文字盤を使って行っていました。

忽那さんも声をかけさせてもらうことに。

忽那「この病院どうですか?」

患者「(文字盤で)ここに来るまでにくたびれた」

さらに、男性は医師を目指す忽那さんに
こんな言葉をかけてくれました。

 

忽那「命・・・」

『命の大切さを分かるようになって欲しい』

命に関わる仕事の責任の重さを改めて感じさせてくれる言葉でした。

忽那「どうもありがとうございました」


診察を終えての感想は...

忽那「ここまで来るのが大変だったというのは、
医者の視点から抜けていることだなと...。大学病院で実習してると、
当然のように患者さんがベッドに寝ていて、それを考えるとハッとした」

 

 

診察の後は、医師になったばかりの「研修医」との面談。
そこで忽那さんは、最も気になっていることを質問しました。

忽那「当直ってどうですか?
学生のうちはしないじゃないですか...。そのイメージがわかなくて。
36時間連続勤務と言われてやっていけるのかな...と」

 

「医師不足」で勤務が過酷だと言われていることに、
不安を抱いていたようです。

研修医「当直は月に4回、5回。多いときには6回入ることもある。
極限の状態でものすごく眠い時に
正確な判断と素早い指示が求められる。
頭が真っ白になることもいっぱいあって、
色んなものが試されているなって気はしてます」

 

忽那「・・・大変だなぁ。」

まだ医大生との立場も近い研修医からの話は貴重な時間だったようです。

 

ほかにもレントゲンの見方など、この日の実習はおよそ3時間。

櫻井「どうでした?」
忽那「大学にいるだけじゃわからないことが
要所要所に見られて、来てよかった」

 


実習のあと向かったのは、医師や看護師などを目指す学生が
自主的に行っている勉強会。学校や学年を問わず多くの若者が集まっていました。

 

勉強会終了後、参加していた医大生5人に話を聞いてみました

櫻井「みなさんなぜ医学部に?」

 

帝京大学医学部4年 武田悟秋さん
「おばを肺がんで亡くしたのですが、その時に抗がん剤治療をしないで
短い命を精いっぱい生きるという生き方を選択した時に
それを支えてくれる病院が無かった。
『医学って何だろう?』とそこから考え出した」

 

千葉大学医学部4年 奥野理奈さん(小児科医志望)
「私は、救急車で子供が運ばれても小児科医がいないために亡くなったり...
そういうニュースを中学生くらいの時に見たのがきっかけです」

 

東京医科大学医学部2年 河野洋一さん
「自分は祖父が開業医をしていて、祖父の患者さんとの接し方
患者さんに『ありがとう』と言われているところを見て、
自分もそういう仕事をやりたいと思いました」

実際に医療現場を目にしている医大生として、
何がもっとも不安か聞いてみると...

 

忽那「当直...」櫻井「今日"当直"ず~っと言ってるじゃないですか」
忽那「...でも、みんなそうですよ。眠れないで次仕事で、
患者さんがすごく助けを求めている時に
自分が元気なら絶対しないミスでもしちゃうんじゃないかとか...。
そういう不安とか、ミスしちゃうんじゃないかという不安は絶対ある」

 

やはりみんなの不安は、過酷な勤務。

奥野「実際自分も家庭を持ち子供を産みたいというのもあるし、
仕事が忙しい中で、出産・子育てしながら
現場に復帰できるのかというの不安はあります」

武田「医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)ってよく聞く。
"医師不足"という状況があって、
やりたいことがあればあるほど無理しちゃうんじゃないか...
バーンアウトは人ごとじゃない」

さらに「医師不足」について聞いてみると...

 

千葉大学医学部2年 永田真依子さん(皮膚科医志望)
「学生を卒業したばかりで、医者が足りなくて駆り出されて、
先輩医師と2人で一緒に診るようなところも1人で任されたりとか...。それが不安」

武田「医師不足はニュースでも取り上げられ、なんとなく
みんなそれを見て不安に思っている」
「櫻井さんに聞きたいんですけど"医師不足"が話題になってきて
医療関係じゃない人にどう映っているのか、
どう感じているのかお聞きしたいです」

櫻井「まず"怖いな"と思う」
「自分が家庭を持った時に行くところがないのがすごく怖い。
子どもの時お腹が痛くなって、結果的に僕は小児科の先生に診てもらえたけど、
それが"できなくなる"と思うと、子どもにとっても怖いし
親としても不安でしょうがないですよね」
「すぐ目の前のことだし、今ある色々な問題の中で一番切迫感あるのが
『医師不足』の問題だと思います」

 

忽那「心強い」
武田「医療関係者じゃない人とも一緒に考えたい。
・・・日本全体でどういう医療が良いか一緒に考えたい。
だから、心強い」

 

不安を抱えながらも、
将来の医療を真剣に考えている医師の卵たち。
彼らのためにも「医師不足」の問題は
僕たち患者側も真剣に考えなければならない、と改めて感じました。

 


今回取材に協力してくれた医大生たちは、
このあと、どのような段階を踏んで医師になるのでしょうか。

 

大学の医学部は6年制で、
最近は学校によってカリキュラムも違いますが、
だいたい5、6年生で「臨床実習」といって
実際に病院で「治療チームの一員」として診察に加わります。
忽那さんが通う筑波大学は4年生から臨床実習が始まるので、
彼はいま、この段階で勉強を続けているというわけです。

その後、医師国家試験に合格すると晴れて「医師免許」をもらえますが、
ここからさらに2年間は「研修医」いわば「見習い医師」として
様々な診療科を回ることが義務づけられています。
VTRの中で忽那さんが質問していた先輩医師はこの「研修医」です。
つまり医師の卵が一人前の医師になるには、
最低でも8年の年月がかかります。
「医師不足だから増やせ」といっても
それほど短期間には増やせないのです。

 

今回お話を伺ったみなさんは
「志」の高い人たちばかりでした。
しかし、一方でその「志」だけでは医師をつとめられない
という現実も感じました。

忽那さんが「当直が心配」と言っていましたが
過酷な環境への不安というのは、自分のためではなく
「患者さんに迷惑をかけてしまうかもしれない」という
不安から来るもので、命を預かる仕事の責任の大きさを痛感しました。

若い医師のみなさんが志を失わないような
サポート体制が必要だと感じました。以上、イチメン!でした。