日本テレビ「NEWS ZERO」

http://www.ntv.co.jp/zero/

12月17日イチメン 韓国のNext!Generation

 

今年7月にZEROでは日本の参議院選挙で
「Next!Generation」と題して、
僕と同世代の20代30代に注目しました。

そこで、今回は大統領選挙が迫った
「韓国のNext!Generation」を取材したいと思い、
実際に現地へ行って来ました。

こちらは、韓国大統領選で有力と言われていた3候補です。
ハンナラ党のイ・ミョンバク候補。
無所属のイ・フェチャン候補。
大統合民主新党のチョン・ドンヨン候補。

そして、これらの候補にとって見逃せないのが
Next!Generationの存在です。
今回、韓国では投票できる年齢が1つ下がって
「19歳から投票が可能」になったんですが、
その19歳を含んだ20代30代の若者は
有権者全体の中で実に
「44%」を占めているのです。

日本の20代30代は有権者の31%ですから、
数字の上からも「カギ」を握っているといえます。

また、前回の大統領選では、
午前中の出口調査で負けていた
ノ・ムヒョン候補が逆転勝利をおさめましたが、
その裏では若い世代のノ・ムヒョン支持者が
「インターネット」で劣勢を伝えて、
他の有権者に投票を呼びかけることで
逆転を後押ししたという話もあります

今回も間違いなく選挙のポイントとなる
「若者」と「インターネット」。
実際、韓国に行ってみると
新たな選挙戦略が見えてきました。
 

大統領選挙を目前に控えた韓国・ソウル。
5年に1度の盛り上がりは、どんなものなのでしょうか。

櫻井「街の至るところに候補者の横断幕がたくさん並んでいます。
かなり大きな形で、交差点、あらゆる所に横断幕が見られます。」

日本でよく見かけるのは、候補者の選挙ポスターですが、
韓国では、横断幕が街のいたるところで掲げられています。

20歳、30歳代のNext!Generationは
新しい大統領に何を期待しているのでしょうか?

男性「若者の就職難の問題などを解決して欲しい。」
女性「就職難を経験しなくて済むようにして欲しい。」

今、韓国は、景気の悪化で、大学を卒業しても
正社員になれない若者が半数以上。
このため「就職難」の問題が大統領選の重要な争点となっていました。

大学4年生のナ・ホンジンさん。
彼も今、就職難に直面している若者の一人です。

ナさんの通う高麗大学は、韓国では1・2を争う有名私立大学です。
しかし、就職試験を受けた企業は全て落ちてしまい、
韓国には、いま彼のような若者があふれています。


ナさん「就職活動のシーズンには、学内のこの辺一帯、
全てが就職情報の横断幕がかけられているんです。」

しかし、そうした就職横断幕はもう片付けられていました。
今年の就職シーズンはほぼ終わり、
ナさんはすでに来年の就職活動の準備を始めたそうです。

こうした現状に韓国では、今の政権への不満が
ごく普通の若者の間でも広がっているそうです。
ナさんも特に政治意識が高いわけではないと言います。

櫻井「今回の大統領選はやはり注目してますか?」
ナさん「就職活動中の若者は大統領選挙にとても関心があると思うし、
僕にとっても最大の関心事です。
特に経済に関する公約には注目していますね」

ZEROが韓国の若者に対して行ったアンケートでも
7割以上が「景気対策」と「雇用対策」に期待していました。

  
ナさん「韓国での大統領選挙のように、
日本では就職難の学生は選挙を重視してるんですか?」

櫻井「おそらく就職活動してる人たちは、
選挙どころじゃないと思ってるところがあると思います。
選挙で誰かに代わったから自分の就職活動がうまくいく、
状況が良くなるという気持ちがあまりないので
政治と自分の生活とが密接な関係にないですね。」

すると、ナさんは・・・
ナさん「僕は今回の選挙をきっかけに、
就職難の問題が解決されることを願っているんです。」

櫻井「だから大統領選をよく注目してるんですね。」

韓国の若者は自分たちが抱える問題は政治の力で
解決できると考えているようです。

そんなナさんや、多くの若者が候補者の情報を得る手段がインターネット。
  
ナさんがすすめてくれたのは「UCC」と呼ばれる、
今、若者に人気の投稿動画サイトです。その中身はというと・・・

UCC>「霧で先行きが見えない大統領選となっています。
有権者の皆様、候補者選びにはご注意下さい。」

これは選挙戦を天気予報に例えた動画。
UCCは、一般ユーザーがビデオカメラなどを使って映像を制作し、
ネット上で公開します。選挙に関する映像も多く存在しています。

ナさん「新聞やテレビを通じて見せられる候補者や
政党CMというのは良い面だけを宣伝していますが、
UCCは一般市民が作った映像だから、
よくも悪くも大げさに表現したり、パロディもあったり、
とにかく、面白いんですよ」

実は今、韓国では、このUCCを制した者が
選挙戦を制する、とまで言われています。

一体どういうことなのか、韓国最大のUCCサイト、
パンドラTVを訪ねました。
一日のアクセスが220万人に上るというパンドラTV、
一般のユーザーが毎日、競い合うように動画を送ってきます。
その数は1日、数万件。

例えばこれは、選挙戦の状況を風刺した動画。
UCC>「イ・ミョンバク選手とイ・フェチャン選手が競い合っています。
あ~!イ・ミョンバク選手、疑惑の石につまずき転んでしまいました。
こうなると走ることは難しそう!」

女性「今回の選挙から19歳も選挙権が与えられたため、
若い世代が選挙に興味を持ち、
UCCで候補者らの動画を作って楽しんでいるのです。」

櫻井「こういう映像がたくさんできるくらい
多くの人が政治に興味を持ってるというのが驚きですね。」

実は候補者たちも、若者の支持を獲得するため、
自ら動画を作って、UCCのサイトに載せているというのです。
実際に見てみると・・・

『イ・ミョンバク候補のUCC』

イ・ミョンバク候補は、
自らのアニメを作って若者にむけてアピール。


『チョン・ドンヨン候補のUCC』

チョン・ドンヨン候補も若者受けを狙ったのか、
ミュージックビデオ風の映像で対立候補を批判。


『イ・フェチャン候補のUCC』

イ・フェチャン候補は、子供の頃からの写真で
親しみやすさを強調する戦略。

櫻井「日本にもこういうのがあれば選挙、
政治に意識が向く人も増えるんじゃないかなと思いますね。」

さらに、パンドラTVからの企画で実現したのが、
候補者の妻のカラオケ大会。

候補者たちは、UCCという場で
なりふり構わずアピール合戦を繰り広げているのです。

<パンドラTV>「若い世代の支持を得るために、最も簡単、
かつ少ない費用で大きな効果を得られるのが
インターネットやUCCを利用した選挙活動なのです。」

しかし、過熱するUCCブームの一方で問題点も浮かび上がっています。

ここは選挙管理委員会が管轄するサイバー調査チーム。
1000人以上の監視団がインターネット上で
公職選挙法違反に当たる書き込みなどを取り締まっています。


櫻井「これは何がダメなんですか?」
係官「候補者を犯罪集団扱いして描いているんです。」

係官「今のところ、候補者やその家族に対する誹謗、
ウソの内容公表が主な監視対象です。」

UCCには、過激な意見や誹謗中傷も多く、
そうしたものにはサイバー調査チームが
削除要請などを通告しています。

  
櫻井「本当に最近の問題だから必要にかられてというか...。
この調査委員会がないとネット上で
悪意しかない映像とかが氾濫してしまう。
それを防ぐために必要になってきたのかな...」

いまや選挙戦に欠かせないUCCですが、
過激な表現など、問題も多く残されていました。


就職難が広がっている韓国。
ナさんも就職できず苦しむ典型的な大学生。
今回も必ず投票に行くといいます。
その関心の高さは、就職難という
自分が直面した問題があったからなのでしょうか?
聞いてみたいと思いました。

 
櫻井「いつ頃から政治に関心を持つようになりました?」  

ナさん「僕は以前の市議選で、選挙ポスターを見て適当に投票したことがありました。
その候補が当選しましたが、しばらくして事件に巻き込まれて
辞職することになったのです。何も考えずに投じた一票で、
当選する資格のない人を当選させてしまい、その時、自分の一票を
怖く感じたんです。それからはもう少し真剣に考えを持って
投票するべきだと思うようになりました。」

一票の重み。

櫻井「今度の大統領選、自分の一票で韓国を変えられると思いますか?」

ナさん「断言はできないけど、自分の一票が韓国の未来を
変えるという期待は持ってます。」

韓国のNext!Generationはどんな判断を下したのでしょうか。