日本テレビ「NEWS ZERO」

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4月16日イチメン 日本の映画、なぜ自主規制?

今回はイチメン!とカルチャーがドッキングして
総力を挙げて取材を進めました。

このマーク知っていますか?
【R-15】=劇場で映画を見る時に
「15歳未満入場禁止」を表すマークです。
先週土曜日公開されたばかりの
ある映画が「R-15」の指定に揺れています。

 

昨年、アカデミー賞外国語映画賞に輝いた『ツォツィ』。
映画の舞台は南アフリカです。


【ストーリー】※以下、映画の内容が含まれています。

貧困に喘ぐ少年(ツォツィ=「不良」の意味)が
裕福な女性を襲い車を強奪。ところが、車の中には乳児が。
少年は迷った揚げ句、子供を家に連れて帰りますが
子守をするうちに命の尊さに気づき、更正していきます。

この作品が、15歳未満=中学生以下は
劇場で鑑賞できない「R-15指定」を受けました。
R-15に指定したのは映倫管理委員会という組織。

その理由は「未成年による、銃あるいはアイスピックによる
殺傷シーンが、15歳未満には不適切」という判断でした。

しかし、この作品を観た評論家から
R-15は適切でないという声があがりました。

映画評論家:佐藤忠男氏
「暴力そのものを面白がる映画は確かにある。
しかし、それとは全然違って子供が見ても
これがアフリカの現実なんだというのがよくわかると思う。
だから、15歳未満が見られないというのは意外。」 

専門家の声に後押しを受けた配給会社の日活は、
R-15指定の見直しを求める動きを始めました。
つまり、中学生が見られるかどうかで
議論が巻き起こっているのです。

 

そもそも現在、日本の映画には4つの区分があって
【一般】は誰でも見ることができる映画。
【PG-12】のPGはParental Guidanceの略で
「12歳未満は保護者と一緒に見るのが望ましい」
という指定です。

そして、『ツォツィ』が指定されたのが【R-15】です。
【R-15】や【R-18】のRはRestricted(制限)の略ですが、
それぞれ中学生以下や高校生以下の
「入場を禁止する」ルールになっています。

 

実は、これらの指定はあくまで映画界の「自主規制」です。
ですから、違反したからといって法律で罰せられることはありません。

 

そして、審査をしているのが映倫管理委員会。
映倫が審査するのは日本国内で公開されるほとんどの映画で
その数、年間600本!
それをわずか8人の審査員で見ています。

1本の映画を2人1組で審査していていますが
単純計算でも...1人当たり「年に150本」も見る計算になります!

 

ちなみに、『ツォツィ』はイギリスやスウェーデンでは
日本と同じで15歳未満は鑑賞することができません。
でも、アメリカやカナダは入場禁止の指定ではなく
「親と同伴」なら見ることができます。

そんな中、『ツォツィ』公開1週間前の4月7日。
映倫のR-15指定を見直して欲しいと考える日活は、
中学生を含む10代を対象にした特別試写会を開催。
子供達の意見を求めました。

 

試写会に来た中学生からは
「暴力とかのシーンはちょっと怖かったな...」とか
「物語を知れば、多分誰が見ても大丈夫な映画だと思います」
といった話が聞かれました。
また、日活がこの日行ったアンケートの集計では
「R-15」に賛成が3反対が86という結果になりました。

そこで、日活は映倫に対し「再審査」を求めましたが
映倫側は「日活は審査後に一度R-15の指定をOKした」
として「再審査」自体を行わないという決定をしました。

そして、『ツォツィ』は「R-15」指定のまま公開。
日活側は「公開中の変更でもかまわない」として
公開後も映倫に働きかけを続けていくそうです。


でも、なぜ映画界は
このような「自主規制」をしているんでしょうか?

そもそも戦前や戦中映画は「検閲」を受けていました。
国家が映画を検査して国の方針に合わないと
「上映禁止」や「改変」をしてしまうので
「表現の自由」が無かったのです。

 

そして、戦争が終わると日本を占領していた
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって
検閲が続けられました。

しかし、戦後の新しい憲法では「表現の自由」が保障されていたため
しばらくするとGHQは日本の映画界に対して
「自主規制の団体」を作るように指導しました。
こうして終戦から4年後(1949年)にできたのが
「映画倫理規定管理委員会」(現在の映倫の前身)です。

つまり、映画界の「自主規制」がきちんと働いている限り
映画は国に「検閲」されることはないということです。


そして、この「自主規制」は
社会の動きに合わせて変化してきました。

 

例えば、以前は映画の区分が
「一般」と「成人向」しかありませんでした。

しかし、1974年に『エマニエル夫人』という作品が
「一般映画」として公開されると、この作品が
「芸術か性描写か」で日本中を揺るがす議論を呼び
映倫には「なぜこんな映画を許すのか」といった
批判の声が寄せられました。

その結果、「一般にも成人にも入らない」区分として
「R指定」(中学生以下入場禁止)が作られることになったのです。
その後、PG12も生まれて現在の4つの区分になりました。

村尾さんは
「映画界の自主規制には意味があると思います。
でも、更生していくツォツィの表情の変化が印象的だった。
中学生にこそ見せたい映画だと思う。」
とコメント。


僕はここまで映画の自主規制を調べてきて、
PG-12(小学生以下は親と同伴が「望ましい」)と
R-15(中学生以下は「入場禁止」)の間が広いと思うので
【PG-15】といった新しい区分の創設を考えてもいいのでは?
と考えています。


以上。特別編「イチメン!&ZEROシネマ」でした。